胡桃

私は泣く。
かわいそうな自分のために
どうにもならない周りのことに
大人を理解できない子どもや、子供の心を忘れた大人のために
海の向こうで孤独にしている老人のために
隣に住む大学生や、
地上の草を濡らした朝露、掘り起こされる前の鉱物のために
思いつく限りのたくさんのものごとは
それぞれひとつひとつ手にとって
それよりたくさんの思いつかないものごとは
すべてまとめてゆっくりと
私の涙で生まれ息づいたものたちは
やがて永遠の静寂に消える
それを知っている私は泣く。
そうして波間の彼方に消える
 
すすめられた胡桃は非常にグロテスクで、
からからの殻は死んだ胎児の頭骨のようだった。