胡桃

私は泣く。
かわいそうな自分のために
どうにもならない周りのことに
大人を理解できない子どもや、子供の心を忘れた大人のために
海の向こうで孤独にしている老人のために
隣に住む大学生や、
地上の草を濡らした朝露、掘り起こされる前の鉱物のために
思いつく限りのたくさんのものごとは
それぞれひとつひとつ手にとって
それよりたくさんの思いつかないものごとは
すべてまとめてゆっくりと
私の涙で生まれ息づいたものたちは
やがて永遠の静寂に消える
それを知っている私は泣く。
そうして波間の彼方に消える
 
すすめられた胡桃は非常にグロテスクで、
からからの殻は死んだ胎児の頭骨のようだった。

雨の日に思うこと

嫌いなもの、役割、ラベル、向上心、なめくじ、百合、雨の日に足が濡れること。
好きなもの、混沌、不思議、あまのじゃく、かたつむり、薔薇、雨を窓辺で眺めること。
 
微妙な差異を見分けられると、世界がまた深くなる。
音階は7つ、鍵盤は88鍵、奏でる音楽は無限大。
 

Other Voices, Other Rooms (Vintage International)

Other Voices, Other Rooms (Vintage International)

やっと大人に

なんとなく今年の読書状況を振り返ってみると、折にふれていろいろ考えていたことを思い出した。
 
1.流行に流されても、いいことなんてなにもない。
  →銃・病原菌・鉄(上) ジャレド・ダイアモンド:劇的につまらなかった。
2.去年から熱望しているのだから、そろそろロシアに行きたい。
  →アンナ・カレーニナ(上)(中)(下)レフ・トルストイ
3.三島由紀夫が好きだ。
  →音楽 三島由紀夫潮騒 三島由紀夫、不道徳教育講座 三島由紀夫:読みすぎ。
4.でもカポーティも好きだ。
  →遠い声 遠い部屋 トルーマン・カポーティ
5.法律って意外と面白いかもしれない。
  →よくわかる民事裁判 平凡吉訴訟日記 山本和彦、伊藤真民法入門 伊藤真:でも8割めんどくさい。
6.江國香織村上春樹は、読みすぎて少々食傷気味。
 
読むだけ読んで何も消化出来ていない感じがする。
 
役割で生きている人を見ると、不思議な気分になる。
もっともっと自由なのに、なんで自分を縛り付けるんだろうって理解できなくて、
その縛っている縄は自分のお手製でしょうって言ってあげたくなって、
でもそれを私が言うのはその人としては望んでいることではないから言えなくて、
結局、「そっかー、大変だねえ」という心にもない同情心を表す言葉を選んで発する。
こんなことしている自分が、ほんと不思議。
大人になるって、面倒なことなのねえ。

金太郎飴の日々

毎日の生活は同じ事のくりかえし、というのが
私の人生をより豊かにしてくれるのだということを
実感しているところです。
早寝早起き、ストレッチ、三食とおやつ、勉強、読書。
毎日同じで毎日違う。
プログラム化された生活に安心します。
土日なんてなくていいのに。
私は毎日同じリズムで動きます。
 
ふと目の前を横切った花びらだと思っていたものが、じつは最後の雪で、
盛りを終えた桜と雪が一緒に降るという陳腐な幻想みたいな出来事が
一昨年、実際にこの場所で起きたそうです。
ああ、思った以上に遠くに来てしまったなあ、と思いました。
 
読書が滞っていたので、そろそろ再開。
いろいろ買い込んじゃったのでちゃんと読みたいです。
でも焦りは禁物。
読書もランニングと同じでウォーミングアップと段階トレーニングが必要です。
急にドストエフスキーとか読むと筋肉痛になっちゃうから、
ちょっとずつ慣らしていきます。
江國香織村上春樹遠藤周作三島由紀夫、ときたので、
そろそろ外国文学にトライできるかな。
 
■小説の類

ムーン・パレス (新潮文庫)

ムーン・パレス (新潮文庫)

 
競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)

競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)

 
サキ短編集 (新潮文庫)

サキ短編集 (新潮文庫)

 
マンスフィールド短編集 (新潮文庫)

マンスフィールド短編集 (新潮文庫)

 
サンクチュアリ (新潮文庫)

サンクチュアリ (新潮文庫)

 
O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

 
アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)

アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)

 
■英語の本
The Elephant Vanishes

The Elephant Vanishes

日本語版は読んだことがあるのだけれど、
この短編集を編纂したのはアメリカの出版社。
まあ簡単に言うとレクサスみたいなもんです。
ということで、翻訳版も読んでみることにしました。
「午後の最後の芝生」が好き。
 
Justice: What's the Right Thing to Do?

Justice: What's the Right Thing to Do?

サンデルさんの白熱教室に参加したので、そろそろ著作も読もうかなと。
きっとわかりやすい文章を書くだろうな、と睨んでいたら
当たり、やっぱり平易な論理構造と文章で書かれていました。
とはいえ時間がかかるなあ。
 
英文法解説

英文法解説

高校時代、学校で買わされたチャート式の使えなさにいらつき、
壁にぶん投げたこと数知れず。
こういう本があるって誰か教えてくれていたら、
もしくはもっとインターネットが発達していたら、
崩壊したチャート式を縫い合わせずに済んだかもしれない。
 

社会人復帰

7ヶ月のブランクを経て、社会人に復帰しました。
こうやって数えてみると、結構長い間ふらふらしていたみたいですね。びっくり。
 
新しい仕事は法律事務。苦手分野を克服しようキャンペーン第2弾。
第1弾のITで撃沈したのに、懲りません。
「どんなに遅くなっても20時半」という先輩の言葉を信じて頑張ります。
多少大変でもいいんです。早く帰りたいんです。それだけなんです。
ということで、字面通りの「九時五時おやつつきのお茶汲みOL」やってます。
履歴書と一緒に提出を求められた作文で、カポーティ「冷血」について熱く語ったところ
それが顧問弁護士の目に止まったらしいので、もうニューヨークに足を向けて眠れません。
(どの方角だろ)
 
年末にちょっとした騒動があったり、年明けに暴飲暴食したりしたせいで
応募者全員大サービスのインフルエンザをもらいうけ、大変な目に遭いました。
その病床で、思い立ったように求職活動、というか探職活動を始めてしまったおかげで
なかなか読書習慣が戻らず、そのまま今に至ります。
今年に入ってから急激に変化した生活は、まだ落ち着いていません。
余裕はもちろんいっぱいあるのだけど、生活自体が波打っている感じ。
おちつけー、ゆらぎ。
 
気づけばもうすぐ26歳。生かされていることに感謝します。
自分が好きな自分でいられるのは、守ってくれる人がいるからです。

Farewell, my 2012.

神の子イエス様のご生誕日ですが、わたしにとっては
(というか、だいたいの日本人にとっては)年末のいち平日です。
実家でこたつにあたっていると、頭の中が年越しモードに切り替わり始めました。キリキリ。
年齢ではなく西暦で物事を考えるのが習慣なので、まさに今がその時。
昆布茶でも飲みながら、今年の反省をしよう。
 
今年は例年より興味深い経験をすることができたと思います。
 
春が来るまで、バタバタと引越しの準備をしながら、自分のした決断を思い直しては悩み、
その度にたくさんの別れを告げました。
夫に、二人の生活に、二人で見てきた世界に。
さよならと言えるうちは一緒にいられるんだ、という実感は私の心を甘く溶かしましたが、
溶けた心は絶望の淵からこぼれ落ちていきました。
大切な物を、日を追うごとに失っていくこと、こぼしていくことの恐怖と闘うことになりました。
それと同時に、自分の輪郭が崩れていくのを感じ、
もうそれは元の形に戻らないのだということも理解しました。
 
冗談抜きで毎日、泣きながら東京で生活していましたが、
2ヶ月が過ぎた頃、我慢するのをやめました。
退職を決めてからの1ヶ月あまりは、
会社のエグさと社会の理不尽さを目の当たりにし、唖然としました。
背筋が寒くなり、笑顔は凍りました。
個人というものの弱さ、そして大きな組織の冷酷さと強欲さを実感しました。
 
季節はいつしか夏から秋、そして冬になり、
ようやく、ちゃんと心を使って生きることを取り戻した実感が湧いてきました。
それはこれまでの自分の肯定でもあり、周りへの感謝でもあり、
なにより世界の本質的理解でもあります。
とにかく、元気になってきました。
友人や昔の職場の方々、そして家族のおかげです。本当に。
 
今年は壊すか受け取るかばかりで、何も生産できなかったなあ。
まあ、これまで作ってきたものの価値すら、今の私には判断がつかないのだけど。
これから生み出していくものには、納得できる価値をつけようと思います。
 
自分がやりたいことすらできなくて、「人のため」に生きるなんておこがましい。
私はわがままに生きることにします。
わがままに生きる分、みんなのわがままも聞いてあげるんだから。
 
今年はこんな一年でした。
来年もまた、いい年になりますように。
 
■今年最後の本たち(しつこく)

宇宙創成(上) (新潮文庫)

宇宙創成(上) (新潮文庫)

宇宙創成(下) (新潮文庫)

宇宙創成(下) (新潮文庫)

金星の満ち欠けすら理解できなかった地学音痴を、うならせるほどの良書。
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

調子に乗ってこっちも読んでいる、定期テスト28点の数学音痴。友達が読んでいるという話を聞いて。タイトルが直訳すぎて衝撃。
 
今年読んだ本は75冊です。(コミック除く)
仕事してたときの読書習慣は壊滅的でしたが、
元気が出てきた秋頃からは月10〜15冊ペースで読めました。
来年もこれくらいいけるといいな。

本まみれ

ふらっと東京に遊びに行ってみたら、痛い目見ました。
刺激をたくさんもらいました。
そんな人達に囲まれて、幸せものだなあと感じたところです。
 
引越しの時に本棚を大量増設したのだけど
それでも間に合わない本の収納。
私は気が狂っているのかもしれません。
いや、そうに違いありません。
 

壁 (新潮文庫)

壁 (新潮文庫)

まだ安部公房
アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

ブローティガンの幻想は逃げ水のようである。「さよなら愛しい人」のフィリップ・マーロウがかっこよすぎて惚れた。
夜間飛行 (新潮文庫)

夜間飛行 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

サン=テグジュペリ特集。
ホテル・ニューハンプシャー〈上〉 (新潮文庫)

ホテル・ニューハンプシャー〈上〉 (新潮文庫)

名作映画の原作、「ガープの世界」を読む前に、様子見。
細雪(上) (新潮文庫)

細雪(上) (新潮文庫)

むかし図書館で借りて読んだのだけど、もいちど。
ぼんやりとしか読んでいなかったので、友達に筋を訊かれても答えられなかったよ。。
春琴抄 (新潮文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

谷崎潤一郎は、変態だけど見過ごせないのが不思議。
Xの悲劇 (角川文庫)

Xの悲劇 (角川文庫)

ジャケ買い
Murder on the Orient Express (Poirot)

Murder on the Orient Express (Poirot)

ハヤカワ翻訳版が最近出したアニメ調の表紙が気に入らなかったので、
しょーがなく原文版買った。こっちのデザインは秀逸。
翻訳夜話 (文春新書)

翻訳夜話 (文春新書)

海外文学をこれだけ読んでみると、翻訳についても持論ができあがっているわけで。
音楽 (新潮文庫)

音楽 (新潮文庫)

お嬢さん (角川文庫)

お嬢さん (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

で、結局の三島由紀夫
 
若いうちにしか触れられないものは、必ずあります。
感度の高い今だから、できるだけおいしい水を探します。
瀕死のホタルみたいです。
 
急に何かをしたくなる衝動に駆られるようになったのは、いい兆候。
エヴァンゲリオン」にはまってシリーズ全作を鑑賞し、
物理は夫に教わりながらセンター試験を解き、
世界史は受験生用の教材で独学中です。次は日本史だな。