アクアリウム


Porlaroid SX-70
 
夏になると行きたくなる場所の一つに、水族館があります。
眩しい太陽と、押しつけられるような暑さに追い立てられて入った、水の世界。
冷たい海の底にいるタカアシガニも、温かい大河に棲むネオンテトラも、
いつだってみんな同じ、涼しい顔をしています。
 
水族館は動物園とは違って、美術館と似ています。
私はちょっと暗いところから、スポットライトが当たり、きらめく展示物を眺めるのです。
ほんの少しの羨望をもって。
 
水族館の通路が暗い理由はいくつかあるようですが、
その一つとして「明るい水槽にいる魚たちは、暗い外にいる人間の存在に気づかない」ということが挙げられます。
 
実はこれ、身近に例がありました。電車です。
夜の電車や地下鉄に乗っている時に外の景色を眺めようとしても
真っ暗な背景に映り込むのは、自分のいる車内の風景になってしまいます。あれです。
 
自分のいるところが明るいと、外が見えない。
外を見るためには、せめて自分と同じ明るさで、外を照らさなければならない。
 
自分でいっぱいいっぱいになってしまうと
外の世界が目に入らず、成長の機会を失ってしまいます。
一方で、外にばかり光を当ててしまうと
自分が本当はどんな人間なのか、どんな意志で生きているのか、いつの間にか忘れてしまいます。
 
機敏に動けて状況の判断もできる、腕のいい照明さんを自分の中に持っていたいなあ。
 
 

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

 
3ヶ月前にベッドの下から発掘に成功して以降、すっかり忘れていました。
短編集なので一気に読めました。
この人の書く話には、悪がない。
 
追記:
空があんなに青くて透明感があるのは、それだけでなくいろんな色を自在に表現できるのは
宇宙が真っ暗だからだそうです。
宇宙が光で満ちていたら、空は真っ白だというのが当たり前だったのかもしれません。
あ、その前に、膨大な光エネルギーの熱で生命なんか生まれないか。