サンクチュアリ、さいごの別れ


Polaroid SX-70
 
祖母が、今住んでいる家を手放すことにしたそうです。
 
娘(私の母親)も息子もとっくに巣立ち
それから母親と夫を亡くし
祖母は8年もの間、ひとりで暮らしていました。
 
その家は、船の設計士だった祖父が
念願のマイホームだから、と張り切って設計したのだそうです。
(一応本物の家の設計士さんに見せに行ったら
 「こんなの家じゃない、船だ!!」と喝破され、結局大幅に手直しされたそうだけど。)
それから39年。
一時は7人もいた住人は、祖母だけになってしまいました。
 
今月の中頃に引き渡すことが急に決まったので
慌てて飛行機のチケットを取り、先週末、最後のお別れをしてきました。
 
生まれて初めて住んだ家。
今はもうこの世にいない、曽祖母と祖父の思い出がたくさん詰まった家。
帰ってくるたびに、他でもない「わたし」に戻れた家。
春が、夏が、秋が、冬が、とんでもなく強く感じられる家。
私の家族が、みんなで守ってきた家。
 
この家の持つ歴史という財産を、ひとつでも多く持ち帰ろうと
過呼吸になる寸前まで、何度も何度も深呼吸してきました。
 
大事な記憶を呼び起こすきっかけとなっていたこの家もまた、
記憶の一つになっていきます。
 
時は流れる。